長く争われた相続の裁判に関ったとき、それぞれの主張のよりどころが違っていることで話が平行線になっているな、と感じたことがあります。つまり、1人は法律を優先させたい、別の一人は慣習通り家を継ぐ長男がすべて相続するべき、故人の晩年に身の回りの世話をしていたもう一人は、故人が「お前にすべてやりたい(相続させたい)」と言った、という故人の遺志を尊重したい、というものです。お互いの意見が交わらないというのはそれぞれの主張のよりどころ、価値基準(「こうあるべき」)が複数あることが原因とも考えられます。話の早い段階で、何を基準にするか合意できれば、どこかで意見が重なる点をみつけることができるのではないでしょうか。